権利者様の声
再生を実現されたみなさまは、
どのように事業を進めていった
のでしょうか?
建替えを経験された権利者の方々に、
当時のことをお聞きします。
みんなが戻ってこれるマンションにしたい。
つつじヶ丘マンションはスーパーマーケットが入居するなど、利便性の高い住居・店舗複合型のマンションとして1969年1月に竣工しました。しかし年月が経過したことで排水設備や壁面等の劣化が進行。耐震面の不安もあり、本格的に「建替え」に乗り出す機運が年々高まってきていました。
一方で、「商業・住宅の複合用途マンション」、「権利関係が複雑な借地権マンション」、さらに、建替えの経済性が期待し難い「既存不適格」など、解決すべき課題の多い高難度マンションでもありました。
そんな難解なマンションが2021年に建替えを完了。
現在も建替え前の所有者の7割ほどが生活していて、建替組合理事長の「みんなが戻ってこれるようにしてほしい」という想いを実現させました。はたしてどのように課題を克服していったのでしょうか。
今回は、建替えを主導した同組合の理事の方々に当時のお話をうかがいました。
つつじヶ丘マンション
建替え事業インタビュー
組合役員:理事長様、副理事長様、理事様3名
組合顧問:辻村様
事業コンサルタント:(株)タウン・クリエイション 石川様
“アラフォー”となり様々なトラブルが
頻発していたマンション
急行も停車する京王線「つつじヶ丘」駅から徒歩2分という好立地で、階下にスーパーマーケットや100円ショップが入居していたつつじヶ丘マンション。圧倒的な利便性の環境は、49戸の居住者にとっても大きなメリットとなっていました。
しかし1969年に竣工したマンションは排水設備の劣化が進み、あちこちで漏水トラブルが続出。一箇所漏水が起きた排水管を直してもすぐにまた別の箇所で漏水してしまう状況で、店舗側で漏水被害が起きた際にはマンションの管理組合が被害を受けた商品を賠償しなければならない状況でした。加えて、住宅の遮音・断熱等の居住性能も低下し、耐震性の不足も懸念されていたこともあり管理組合のみなさまも「もはや修繕では追いつかないのではないか」と感じるようになっていました。
Interview
“修繕の限界”の事実で
建替えの機運が加速
そこで2007年に建替え検討委員会が設置され、建替えが必要なのか大規模修繕で間に合わせることができるのか、再生検討の専門家・辻村氏を顧問に加えて本格的な検討がスタートします。ここではマンションの物理的な劣化についてはもちろんのこと、“借地権マンション”という状況に対しても現状把握と改善策の検討が進められました。
当時のつつじヶ丘マンションの状況は、専門家の目から見て「修繕の限界」を迎えていたと辻村氏は語ります。「昔のマンションだから配管や配線は全部、壁・床に組み込まれていた」(副理事長)とこともあり、頻発していた漏水を根本から改善するには配管の総入れ替えが不可欠。「調査だけでもおよそ2,000万円の費用がかかってしまうことがわかりました」(辻村顧問)ことにより、管理組合は“修繕の限界”を感じ始めていました。
事業パートナーは
豊富な経験と熱意を持った
日鉄興和不動産を選定
2010年になり、建替え検討の事業協力者選定を開始しました。当時の大手デベロッパー各社にコンペティションへの参加を打診し、各社の提案するプランを確認しました。
つつじヶ丘マンションは建替事業を行うにあたって法律上の制約が多く、事業コンサルタントとして参画していた(株)タウン・クリエイションの石川氏も「デベロッパーの視点では良い条件とは言い難かった」と解説。打診したデベロッパーの中には条件の厳しさを理由にコンペの参加を辞退する企業もあったといいます。
しかしそんな条件下でも熱心に提案を続けていたのが日鉄興和不動産でした。理事長は「一番熱心だった。コンペにも営業担当者だけでなく専門部署のメンバーも加えて4〜5人で参加してきて熱量が伝わってきた」と当時を振り返ります。さらに「借地権マンションの建替えを経験していて、そのノウハウがつつじヶ丘マンションの課題にもフィットしていた」(辻村顧問)ことにより、日鉄興和不動産が事業パートナーとして選ばれました。
事業パートナーが決定したことで、建替え事業の現実味が増してきました。他方では「大規模修繕で済ませたい」という声も根強く存在していました。様々な理由で建替えに消極的な声があったのも事実です。理事の一人は「建替え案が提示されても、最初のうちは全体の3分の1ほどの居住者が建替えに対する不安を覚えていた」「費用面・環境面での負担が不安」という声もあった、と語ります。
権利者に寄り添う
親身な対応で不安を払拭
複雑な権利関係もノウハウを
活かして事業推進
「区分所有者の不安を払拭するのに大きく貢献したのが、日鉄興和不動産のきめ細かな対応だった」と、理事の一人は語ります。検討段階に応じて相当の回数の説明会や個別面談を実施するものの、事業の性質上どうしても専門用語が多くなり、面倒くさがる組合員は敬遠します。こうしたご高齢の方々などを対象に、日鉄興和不動産は専門用語を排除した「わかりやすい説明会」と題した説明会を随時開催しました。「区分所有者の素朴な疑問点にも一つひとつ丁寧に回答し、知識が豊富。誠実な姿勢が印象的だった」(理事)。
また、日鉄興和不動産は「借地権から所有権マンションへの建替え」という、もうひとつの大きな課題に向けても奔走しました。建替え承諾者となる土地所有者の交渉窓口となり条件交渉に向けて粘り強く協議。土地所有者より建替えに向けた条件の合意を得ることで円滑に事業推進が行える体制となりました。また、「マンション建替え円滑化法によると従前 と従後の権利種類は同一の必要がある」(石川氏)ことにより、一度、借地権を解消し、所有権マンションの状態をつくる必要があります。日鉄興和不動産のノウハウを用いながら、行政と所有権化に向けたスキームの協議を行い、課題を一つひとつ解消していきました。
「建替えには決して好条件ではなく合意形成も容易ではなかった」(石川氏)。管理組合役員が率先して区分所有者に働きかけたこと、管理組合、事業協力者、コンサルタントが良好な連携を築けたことが合意形成において重要な要因だったと語ります。
“マンションの魅力”を残しつつ
“所有権マンション”へと生まれ変わる
管理組合役員、事業協力者、コンサルタントの親身な対応が実を結び、2017年に建替え決議が成立しました。建替えにあたって理事長は「耐震性」と「修繕の容易さ」、そして「つつじヶ丘マンションの魅力でもあった居住者同士の距離が近い雰囲気」を残してほしいと要望したといいます。
「マンションの良さを残してうまく建替えられるのか」と考え続けていたという理事長でしたが、座談会では「要望に応えてくれた」と喜んでいました。
また建替え中は居住者が一時的に他の物件に移ることになるため、建替え決議の成立以降日鉄興和不動産のサポートで移住準備もスタートしていくこととなりました。費用負担の軽い都営住宅への案内も進められましたが、交通の便の問題や収入面の制限もあったことで実際に入居したのは一人でした。
竣工を迎えた新たなつつじヶ丘マンション(現「リビオつつじヶ丘」)には、建替え前の居住者のうち7割ほどが戻ってきました。「旧マンションに余剰容積が残っていなかったため、良好な建替え条件とは言い難く費用負担も小さくありませんでした」(辻村氏)。それにもかかわらず、多くの居住者が戻ってきたことは、「建替事業として非常に成功だった」と理事一同は振り返ります。また、理事長は「建替えは、決して建物を入れ替えるということだけではない。生活そのものが変わらないことが一番大きい」と振り返りました。
「日鉄興和がよかった。
日鉄興和でよかった。」
座談会に参加した理事の一人は、一時は経済面の不安からマンションを手放すことも検討していたといいます。しかし日鉄興和不動産の担当者から紹介された住宅金融支援機構の「まちづくり融資(高齢者向け返済特例)」の制度を利用することで居住者として戻ってきました。
建替え事業については、金融機関は必ずしも精通しているわけではなく、都度、金融機関へのきめ細かな説明や折衝が必要となります。「80代の高齢者に2,000万円も貸してくれる金融機関が本当にあるのか?」「落とし穴があるのではないか」と不安に思うときもあったが、「日鉄興和不動産の確かな実績に基づく繊細なサポートのおかげで不安を解消でき、再入居の決心ができた」と振り返ります。
建替え決議が可決しても工事中の地中障害の発生や新型コロナウイルスの感染拡大など不測の事態に見舞われ、困難の連続でした。「建替え事業は何が起こるか分からない。必ずといっていいほど困難に直面する。だからこそ事業協力者は誠実で信頼できる会社がいい」(副理事長)。「コンペでは日鉄興和が一番熱心でよかった。その後も誠実に対応してくれた。日鉄興和でよかった。」と理事一同は振り返りました。